「農家の直売はいい」とよく言われます。
たしかに、小規模のうちはとても有効な販売方法です。
お客様の顔が見え、声が届き、感謝の言葉を直接もらえる。
これは生産者にとって何よりの励みです。


しかし、規模が大きくなると見えてくる壁

直売を続けていくと、ある時から変化が起きます。
物量が一気に増えるのです。

収穫量が増えるということは、
その分だけ保管・選別・管理・発送の手間も膨らむということ。
冷蔵庫や倉庫の維持費、人件費、出荷作業の時間……
これらが少しずつ、生産者の首を締めていきます。

農産物は「生きもの」です。
家電のようにアマゾンの倉庫に預けて、
“売れたら送っておいてください”というわけにはいきません。


規模が大きくなるほど、直売が難しくなる理由

つまり、生き物を扱う産業ゆえの限界があります。
販売を拡大したくても、管理・加工・発送の時間増える。
すると、直販を頑張った分だけ栽培管理の時間が削られ。
体も、時間も、すり減っていく。新たな作目への挑戦もできなくなる。

では、流通に乗せればいいのか?
それにもまた、別の問題があります。


流通に乗ると「価格の主導権」が消える

市場や流通に委ねると、価格は他人が決める世界になります。
自分の努力や品質よりも、相場や天候で値が変わる。
結果として、収入が安定しません。

収入が不安定だと、従業員を雇うこともできない。
だから「直販できない」構造に戻ってしまう。


現在の我が家の状況と、これからの販売方針

我が家でも現在、保管場所・生産管理・販売の時間的バランスを考えると、
2025〜2026年の通年販売予定量が限界になります。

特にお米に関しては、2025年産米が「定期購入で埋まった場合」、
それ以降の販売は収穫期の一括納品・一括支払いのみになる可能性が高いです。


「こだわり米」は、増やせない理由があります。

うちの「こだわり米」は、
代々大切にしてきた土の上で育つ、いわば“家宝”のようなお米です。

この田んぼは、借りものではなく、自分たちの土地
だからこそ、土を時間をかけて育む気持ちになれる。
借りた田んぼでは、そこまでの想いを込めることはできません。

仮に「貸すのをやめる」と言われれば、
その瞬間に積み重ねてきたものが途絶えてしまう。
だから、むやみに増やすことはできないのです。


「増産」よりも「価値を深める」方向へ

増やそうと思えば、田んぼを買うしかありません。
でも、納得のいく立地・環境の田んぼが簡単に見つかるわけではありません。
その代わりに、お米の価値を高める新しい方法を追求していくつもりです。
栽培・仕上げ・販売のあり方を工夫し、
「数量ではなく、質と味で選ばれるお米」を目指します。

通年の販売量はこれから1年と同等、
それ以上にはならない見込みです。
だからこそ、1粒1粒に誇りを込めていきます。


それでも「自販」を続ける理由

それでも、直販という形を続けたい理由はひとつ。
“安定は自分の手でつくるしかない”からです。

誰かに価格を決められるのではなく、
自分の言葉で、自分の価値を伝えたい。
時間はかかっても、我が家を理解してくれる人と長く直接つながりたい。
そんな環境関係性をお客さんの次世代、我が家の次世代にも繋げていきたいですね

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